米独英の量子予算 今後10年間で1兆6,000億円超へ

日米欧など、主要各国が、国家戦略として「量子分野」への投資を急増させている。量子技術を産業構造や安全保障、社会インフラの変革を牽引する最重要技術と位置付けているためだ。量子コンピュータ、量子暗号通信、量子センシングといった最先端領域の実用を見据え、各国は予算投資だけでなく、制度の整備、人材育成など多方面で取り組みを強化している。

日本

 日本は国際連携を重視した量子技術戦略をさらに強化している。2025年4月28日には英国との間で量子科学技術に関する協力覚書を締結し、5月13日にはEUとの協力趣意書にも署名した。これらの協定は、技術開発・人材交流・政策連携での協力促進を目的としており、量子技術の国際競争力強化につなげる。さらに、産業技術総合研究所(AIST)と英国Universal Quantum社との間で、イオントラップ型量子コンピュータとその周辺技術の共同開発に関する覚書が2025年3月に締結され、日本の量子エコシステムの拡充が進んでいる。
 日本の量子予算は2024 年度で約1,000 億円、2020年度からの5 年間で計約3,300 億円に達する。 政府は3つの戦略(技術開発戦略、実装戦略、国際戦略)と2つの推進方策(エコシステム構築、人材・拠点形成)を掲げ、ユー スケース創出を通じた実装加速と技術革新を両輪で進めている。
 量子技術をめぐる国際競争は今後ますます激化することが予想される。各国の投資規模や政策動向を踏まえると、日本も一層の戦略的施策と国際連携、民間活力の活用が求められる局面にある。産業界・学術界・政府が一体となったエコシステムの形成こそが、量子時代における国家の競争力を左右する鍵となる。

アメリカ

 2018年に制定された「国家量子イニシアティブ法(NQIA)」を基盤に、米国では国家安全保障と産業競争力の観点から量子技術支援を強化している。2025年には上院にて新法案が提出され、2026~2030年の5年間で約3,750億円(25億ドル)の予算をエネルギー省(DOE)に割り当てる構想が進行中である。
 また、量子情報科学に対する研究助成「QuantISED 2.0」では、約107億円(7,100万ドル)が配分され、量子センシングや基礎理論研究に5年間で投入される。加えて、量子経済開発コンソーシアム(QED-C)を通じた商業化支援や、ポスト量子暗号(PQC)移行戦略にも重点が置かれている。

ドイツ

 ドイツは2023年から2026年の4年間にわたって、省庁横断的な国家計画のもと約4,800億円(30億ユーロ)の量子予算を拠出している。その内訳には、連邦研究省による約2,200億円(13.7億ユーロ)、研究機関向けの約1,280億円(8億ユーロ)などが含まれる。
 この投資は、産業連携による強固な量子エコシステムの構築と、量子通信・センシングの応用に向けたインフラ整備・標準化を目的としており、技術開発と市場形成を一体的に推進している。

イギリス

 英国政府は、量子コンピューティングを含む国家戦略のもと、2024年から2033年にかけて約4,750億円(25億ポンド)の公共投資を計画している。さらに、約1,900億円(10億ポンド)規模の民間投資誘致も目標として掲げている。
 また2025年4月には、量子技術の社会実装を加速する目的で約230億円(1億2,100万ポンド)の追加予算を発表し、犯罪対策・マネーロンダリング防止・量子セキュリティ分野への応用研究を支援している。英国は「2030年代の量子技術の本格実装」を視野に、5つの重点ミッション(予算支援、民間資金、育成、人材、規制改革)を推進している。